昔昔ある山奥に小さな村がありました。そこには女神様からもらった小さなてんびんがあり、そのてんびんを使って作ったお薬で、村人たちは長生きをしていたのです。そして、てんびんは大切なものなので、お医者さんしか触ってはいけない決まりがありました。
その村にリブラという元気いっぱいの少年がいました。リブラのお父さんは村でただ一人のお医者さんです。リブラのお父さんは村の人たちからとても信頼されていました。そして、そんなお父さんを見て、リブラもいつか立派なお医者さんになろうと思っていました。
リブラはよくお父さんに内緒でてんびんをこっそり持ち出してはてんびんを眺めていました。でも、それをお父さんに見つかるたびにぽかりと頭を叩かれていたのです。
ある日のこと、近所のお爺さんが急病で倒れてしまいました。リブラはお父さんを探しますが、どこにもいません。それもそのはず、まが悪いことにお父さんは村はずれに住むお婆さんの家へ診察に行っていたのです。
「僕がこの人のために、お薬を作らなきゃ。」
リブラは痛みで苦しむお爺さんを見かねて、こっそりと女神のてんびんを持ち出しました。そして、倉庫から薬草なども取り出すと、それらを磨り潰しててんびんに乗せて量り、何とかお薬を作ったのです。
実はリブラは普段からお父さんの仕事を横でみていたので、自然とやり方を学んでいたのでした。
リブラはでき上がったお薬をお爺さんに飲ませます。すると、どうでしょう?お爺さんからは汗が引いて苦しみがすぐに消え去りました。
しばらくして、リブラのお父さんが大急ぎで帰ってきました。横たわるお爺さんと持ち出されたてんびんを見て、お父さんはリブラをぎろりと睨みます。リブラはてっきりぽかりと来ると思い、目を瞑って覚悟していました。でも、それはやって来ませんでした。
「リブラ、よくやったな。偉いぞ。」お父さんはお爺さんの安らかな寝顔を見ると、微笑んでリブラの頭を撫でてあげました。
そして、つぎの日からはお父さんの仕事をリブラもお手伝いするようになったのでした。
お仕舞い。